GPSキャディー講座 – 2. GPSキャディーの現在位置測定の原理 (1)

  GPSでの現在位置の測定原理は、意外に簡単です。高校の数学で(皆さんのご年代によっては中学かもしれません)、XY平面で、A地点(x_{a}, y_{a})からの距離がl_{a}、B地点(x_{b}, y_{b})からの距離がl_{b}になる位置を求める方法を習ったと思います。その位置は、A地点から半径l_{a}の円とB地点から半径l_{b}の円が交わる所です。未知数2の連立方程式で計算できます。

2点A, Bからの距離より点Pの位置を求める

  3次元空間の場合には、3地点からの距離が分かれば、其々の距離を半径にもつ3つの球面の交わりとして決定できます。
即ち、3つの衛星からの距離が分かれば、現在位置を計算できるのです。これが、GPSの現在位置の測定原理です。未知数3の連立方程式ですが、中学生でも理解できる方法です。

  驚くほど原理は簡単ですが、これを実際に実現するのは簡単ではありません。例えば、衛星からの距離が分かれば計算できるというけれど、どうやって測ればいいでしょうか?

  衛星放送や携帯電話に慣れた聡明な皆さんは想像がついていると思いますが、衛星からの電波の到達時間を測るのです。電波は光の速度、1秒間に約30万kmで進みますから、到達時間が100分の1秒かかったとすると、距離は約3000kmということになります。衛星放送や衛星通信に使われている静止衛星は高度が3万6000Kmですから、電波の到達には約0.1秒かかります。衛星放送でスポーツ番組等を見ているとこの時間遅れに気がつきます。GPS衛星は高度が約20000kmですから、電波の到達には0.067秒かかります。

距離と速度から到達時間を求める
(l_{a}はGPS衛星までの距離、t_{a}は電波の到達時間、cは光速とする)

 

  距離は時間で測る、即ち、衛星からの電波の到達時間で測る。簡単な原理ですが、実現は簡単ではありません。例えば、1mの単位まで正確に測るためには、3億分の1秒以上の精度で時間を測る必要があります。日本の誇るクオーツ時計でもこの精度には全く及びません。この精度を実現するため、GPS衛星は原子時計を搭載しています。衛星からの到達時間を計るには、いくら送信時刻が正確に分かっても、到達時刻も同様に正確に分かる必要があります。しかし、GPS受信機に原子時計を搭載するのは、費用の点でも大きさの点でも現実的ではありません。では、どのような方法で到達時刻を正確に測るのでしょうか?